生物研が世界に先駆けて角膜再生素材を新開発

2014年9月19日、独立行政法人 農業生物資源研究所(以下、生物研)が東京大学医学部附属病院と共同で「アテロコラーゲンビトリゲル膜」を開発しました。これは、生物研が世界に先駆けて開発した新素材のコラーゲンゲルで、ブタのコラーゲン分子の両端に存在する主たる抗原部位であるテロペプチドを酵素的に除去した「アテロコラーゲン」を膜状に作成したものです。このように作られた低密度コラーゲンゲルを低温化で十分に乾燥させた後に、再水和させて生体内結合組織と同等の高密度コラーゲンゲルとしています。さらにこのゲルの作成には無血清培養液を使っているため、、体内で副作用を起こさないことが大きな魅力です。また、移植後に十分な透明性を維持して定着すること、眼球に沿う半球面形状であること、ヒト細胞の付着性に優れていることから、今後の角膜移植を必要とする疾患の治療に向けて、角膜再生医療実現を目指します。

角膜移植の現状について

現在、角膜移植手術の原因疾患のおよそ4割が、角膜内皮に異常をきたす水疱性角膜症です。角膜内皮は一度傷が付くと自然治癒しないため、移植による交換でのみ、この疾患の治療が可能です。しかし、世界的にみても移植用角膜は不足しており、日本では年間およそ700人が移植待ちをしている状況です。そこで、角膜内皮を人工的に培養し移植することが可能となれば、多くの患者をより早く治療できることが容易に予想できます。しかし、角膜内皮は一層の細胞膜であり、これだけの培養に成功したところで移植手術に使うとなると脆弱であるため、足場となるような丈夫な膜が必要となってくるのです。

アテロコラーゲンビトリゲル膜とは

こういった背景のもと生物研は、角膜内皮をしっかりと接着でき、角膜の形状に合う半球面形状で、水分などを行き来させるための透過性に優れ、かつ無色透明で丈夫な足場として、「アテロコラーゲンビトリゲル膜」の開発に至りました。もともと生物研が開発していた「コラーゲンビトリゲル」を医療用として改善したもので、副作用が起こらないようにウシ由来のコラーゲンと血清を取り除いて作成しました。角膜移植にはもちろんの事、その強度と高分子タンパク透過性から、その他色々な医療機器や医薬品への応用が期待されています。
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