富士フイルムグループ開発「アビガン」を投与されたフランス人、エボラ治癒

2014年10月6日、富士フイルム株式会社は子会社である富山化学工業株式会社が開発した「アビガン錠200mg」(一般名:ファビピラビル)を投与したフランス人看護師の出血熱が治癒したことを発表しました。「アビガン」は抗インフルエンザ薬として開発されたものですが、作用機序の関係上、インフルエンザ以外のウイルス感染症にも効果があるとされています。今回、エボラ出血熱に関しては未承認であるこの薬がフランス人看護師に投与されたのは、フランス政府機関「ANSM」から富士フィルムに、「アビガン」提供の申し出があったためで、日本政府との協議のもと、今回の緊急事態を受けて対応することが決定しました。このフランス人看護師は、リベリア共和国の首都モンロビアで医療活動を行っていた際に、エボラ出血熱に感染し、9月19日より搬送先のフランスで「アビガン」と他の未承認薬を併用して投与され、10月4日に無事退院しました。

「アビガン」の作用機序について

抗インフルエンザ薬として2014年3月に日本国内での製造販売が承認された「アビガン」ですが、現時点では発売されていません。これは、「アビガン」がパンデミック発生まで流通させないことが承認条件となっているためで、既存の抗インフルエンザ薬とは異なる作用機序でインフルエンザウイルスからの感染を防ぐことが関係しています。現在広く流通している抗インフルエンザ薬は、ノイラミニダーゼ阻害剤であり、ウイルスが感染した細胞から他の細胞へ放出されるのを防ぐ仕組みとなっています。これに対して耐性をもつインフルエンザウイルスが爆発的に増大したときのために開発されたものが「アビガン」です。「アビガン」は、インフルエンザウイルスが一本鎖(-)RNAをゲノムとして保有することに着目して作られました。一本鎖(-)RNAを複製し、自身のコピーを増やす為に、まず一本鎖(-)RNAからRNA依存性RNAポリメラーゼにより(+)RNAを複製し、この(+)RNAがmRNAと同様に働くことで構成タンパクを翻訳します。また(+)RNAから(-)RNAが転写されて、ウイルスの増殖が完了します。「アビガン」はRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することで、一本鎖(-)RNAウイルスの増幅を抑えることができます。

今後のエボラ出血熱対策について

現在、世界保健機関によれば、10月3日までに確認されたエボラ出血熱による死者は3439人にものぼり、前回集計した1日時点から100人以上増加している状況との事です。このように急速に拡大し、もはや感染に歯止めがかからないエボラ出血熱に対し、日本政府は日本企業が開発したエボラ出血熱治療に効果が期待される薬は提供する意向を表明しています。富士フィルムではフランスのほかドイツからも「アビガン」提供の依頼を受け、これに対応し、10月4日にはドイツで治療中のウガンダ人にも投与が開始されています。富士フィルムは、他の複数の国や機関からの提供要請もあること、今後日本政府との協議の上、順次対応を検討していくことを合わせて発表しています。